三ツ境店のSORAです。
読み物シリーズ第４回です。
＃約束があった気がして・・・
私はここに来ると何かを思い出しそうになる。
いつも何を思い出しそうになるのかは思い出せないのだが。
妙な感覚というのか、忘れ物でもしているかのような感覚だ。
「ねぇ、貴方はどうしてこの滑り台のところでいつも車を止めるの？もしかして、昔好きだった人との思い出の場所とか？」
隣に乗る妻がからかうように言った。
「さあね。自分でもよく分からないんだ。何かを忘れているような気はするんだけど、それが何なのか。良いことか、悪いことかもね」
妻は不思議そうに私に視線を向け、その後すぐ訝しげに目を細めた。
「何かこだわりを持っているようにも見えるけど？よっぽど良い思い出なんじゃないの？」
「だといいけどね」
私はそっぽを向いて答えた。
木漏れ日を覚えていた。しかし、夕焼けも覚えている。
共存することのない時系列が、私の頭の中を巡った。
気のせいか？
ブランコが揺れて軋む音。
いや、聞こえた。
それは夕暮れの記憶だ。頭に浮かぶ映像も夕暮れだ。
「明日、また会えるよね？」
誰だ？
「明日もいい天気だったら、ボートに乗ろうよ」
ボート？確かにここは湖畔の公園で、ボート乗り場もある。
記憶の中の映像は、ここで目が眩むような光に包まれて消えた。
目に受けた光の刺激に、視界が歪んだ。
だが、少し思い出した。
静かな町。湖畔の公園があるこの場所で交わした約束。
子供の頃にした他愛のない約束。
それでも、果たせなかった約束。多分、私にとって大事な記憶だったんだ。
もっとしっかり思い出せることがあったら、またここに来てみよう。今はまだ、さようなら。多分許してくれるだろう？
リーフは静かに走り出した。
さてさて、読み物がたり。
通勤電車のお供。
三ツ境店は駅近で待ち時間も商店街がありますよ！
