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2024/11/21 17:26

#その指先に魔法をかけて・・・

こんにちは!
相模原南橋本店のSORAです。
久しぶりに、試乗車を借りることができたので、ショートストーリー第9弾!
アリアe-4orceでいってみましょう!

#その指先に魔法をかけて・・・

 やっと追いついてきたと思った季節の足音は、いつの間にか私の横を通り過ぎたようで、気付くと少し息を白くする気候へと移り変わっていた。
 それでも、乾いた空気と、届くところだけを優しく温める日差しは、まだ秋であることを主張しているようにも思えた。



 車を降りると、秋と冬のちょうど中間のような空気の匂いが漂ってきて、木々の紅葉はまだ前の季節に取り残されたように色づきを見せてはいない。



 私は缶コーヒーでも飲もうかと、自動販売機を探し始めた。
 空は昨日までの曇り空から一転、晴れ渡っている。
 ふと、眺めた空に浮かぶ雲を見て、小さいころは綿飴みたいに食べられるものだと思っていたっけ。なんて、メルヘンな発想をしがちだった幼少期を恥ずかしく思ったりした。



 その時だった。目が眩んだ?いや、そんな気がしただけか?何があったのか自分でも理解できないまま、私は両手で目を覆った。
「ねぇ、ちょっと。そんなに会いたくないの?目を覆うなんてあんまりだと思うわ」
 何?誰だ?女の声がした。しかし、誰だかも分からない相手に随分と上からじゃないか。いや、だが向こうは私を知っている口振りだ。



 私が恐る恐る目を覆う手をどかすと、そこは何故か車内に戻っていた。さっき降りたはずなのに、私は運転席に座っていた。
「なんで戸惑ってるのよ?まさか私のことが分からないなんて言わないでしょうね?」
 声は後部座席から聞こえてくる。
 私は振り返った。
 そして、驚いた。声が出なかった。



「君は・・・何故・・?そんなわけないだろう。まだ子供のはずだ」
 私の口から零れるように流れ出た言葉は、率直な事実と目の前にいる女性への疑問だった。
「分からないなんて言ったらどうしようかと思ったわ。分かったみたいね」
 私が頷いたのは無意識だったと思う。
 見た目から二十歳前後だと思うが、それは間違いなく私の娘だったのだから。



「そんな呆然としてないでよ。そんなに長くはいられないわ。少しは見違えたとか言ってみてもいいんじゃないかしら?」
「あ、ああ、見違えたよ」
「気のない返事ね。まあ、いいわ。少し報告があるの」
「なんだ?」
 私は何故未来の姿をした娘と会話しているのか、未だに頭がついてきていなかった。



「結婚が決まったの。式は来月よ」
「何っ!―――」
「そんな反応だと思ったわ。変わってないのね。なんていうか、そういう優しいくせに素直じゃないところ」
「馬鹿にするな」
「ごめんなさい」
 そう言うと、娘は少し改まった口調になった。
「今まで、ありがとう。それと、まだまだこれからもよろしくお願いします」
「いや待て―――」
 その時、私の視界は暗転した。



 気が付くと、私は買った記憶のない缶コーヒーを手に持って、そこから立ち上る緩やかな湯気を眺めていた。
 なんだったんだ?
 車に乗り込むと、メーターパネルの上に白い封筒が置いてあった。
 中の手紙を出すと、そこには一行だけの、それも小生意気めと笑ってしまいたくなる言葉が書いてあった。
『その車、白馬の馬車みたいで好きよ。その車なら結婚式も遅れないわね』



「言われなくても遅れないさ」
 私は呟いて封筒を置こうとすると、封筒の裏にも何か書いてあることに気づいた。
『お馬さんのご機嫌を窺わなくてもいいんだから、その車の方が好きよ』
 どうやら私の車選びは正解だったようだ。



 だが、娘の名前と同じだったからというのは黙っておくことにしよう。


さてさて、久しぶりに時間が空いての第9弾でした。
いかがでしたでしょうか?
アリアに興味が湧いてきた皆々様。ぜひ「みなはし」へお越しくださいませ。
スタッフ一同お待ちしております!
 
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