
先日、第三世代に入ったリーフのワールドプレミアが開催されましたね。
船長も見ていました。
2010年年末のデビューから15年間の間にとても進歩したと思います。まだ日本仕様の詳細な資料が有りませんので、新型リーフの解説はまたの機会にしようと思います。
今回は前回のEV車を普通充電で運用する編の続きです。
前回を読んでいただいた中で鋭い方はお気付きだと思いますが、普通充電だけで電気自動車を運用する場合は、絶対に超えられない壁があります。
ファーレ金沢店にある5基の普通充電器を見ながら説明しようと思います。

1 これが一番オーソドックスな3kwタイプの普通充電器です。ケーブルが脱着出来ます。
それは、日本の家庭用電圧と電流から求められる一時間当たりの充電可能量には自ずと限界があるという事実です。
具体的にはこんな感じです。通常のご家庭で設置し易い3kw/hタイプの普通充電器は、その名の通りに一時間に3kwが充電出来ます。急速充電器とは違って繋いだ時間の分だけ安定した充電が可能です。
そう、良くも悪くも安定しています。急速充電器の様に途中から充電が速くなったり遅くなったりはしないのです。
この特性に基づいて普通充電器に繋いでおける時間の長さイコール充電量ということになります。

2 こちらは最新鋭機にも対応可能な6kwhタイプです。ケーブルは一体化していますので外せません。
そこで想像してみてください。
会社まで電気自動車で通勤をして、夜の21時頃に帰宅、そのまま車庫の普通充電器に繋ぎます。
翌朝7時には充電器から外して、会社へ出発です。この様な使い方では、電気自動車が普通充電器に繋がっていられる時間は約10時間に限られます。
そこから充電出来る電力量は、3kwh×10時間で求められますので30kwhです。この電力量にそれぞれの電気自動車の電費を掛け算すると航続可能距離が計算出来ます。
例えば、船長の愛車サクラでは冷暖房をオフにして横浜市内を走らせると、カタログ電費を上回る驚愕の電費12km/kwhが可能です。
この場合は計算上の航続可能距離は12km×30kwhとなり、何と360kmも走れます。
でも、よく考えてみてください。軽自動車の大きさのサクラは電池容量が最大でも20kwhなのです。とても30kwhなんて入りません。実際には20kwh÷3kwhですから6時間半の所で電池が満充電になって充電は停止します。航続距離に直すと240km位だと思います。

3 工場内にも6kwhタイプがあるんです。
では、最も電池の大きいアリアB9の90kwh(正確には91kwhですが)の場合はどうでしょう。
この場合は同じく夜21時から朝7時まで3kwhタイプの普通充電器に繋ぐと、計算通りに30kwhが充電可能です。充電可能量よりもアリアの電池容量の方が大きいですからね。
しかし、アリアの方がサクラよりも車が大きく重たいので電費は悪くなります。ここではアリアの電費をエアコンガンガン使って概ね5km/kwhの電費と仮定します。この電費は船長がサクラしか持っておりませんので、あくまで仮定です。
この場合は実際に走れる距離は5km×30kwhですから、150km分になります。

4 工場の外壁に更に6kwhタイプがあるんです。

5 そして船長のサクラをよく繋いでいる建屋下の6kwhタイプ
では、このアリアで通勤距離が片道100km、往復で200kmになるケースはどうでしょうか。200kmを電費5km/kwhと仮定したアリアで走るには電力量で40kwhが必要です。
何かさっきと違いますね。そう、自宅車庫で夜間に充電出来る電力量よりも日中通勤で使う電力量の方が多くなっています。これでは一日一日少しずつ出発時に満充電から下がった電池容量でスタートすることになってしまいます。
夜に普通充電出来る量が30kwh引くことの会社までの往復に必要な40kwhとなります。こうなると毎日10kwh、走行距離に直して50km分が夜間充電だけだと回復出来ずに減っていきます。
つまり、1日目に10kwh、2日目で20kwh.3日目では30kwhが満充電から欠けていく訳です。
このアリアで会社までの往復200kmを走るには、最低でも40kwhの電力がバッテリーに蓄えられていないと途中で電欠して家に帰って来れません。
月曜日から5日間連続で通勤しますと、金曜日には流石のアリアB9でも会社まで往復出来る限界付近の電池残量44%、電力量にして40kwhまで下がってしまいます。
でも6日目7日目が会社のお休みでしたら、土日を跨いで連続30時間ほど家の普通充電器に繋いでおけます。そうすれば週明けの月曜日にはまた充電100%からスタートが出来るところまで回復します。
これが船長の考える普通充電器の超えられない壁です。当たり前ですが充電した電気量以上に使うと徐々にバッテリーが空に近付いてしまいます。
そして、普通充電器では充電速度が一定で決まっていますので時間に比例した分しか電池を回復させることが出来ません。
急速充電器に繋いだり、有給休暇を取って通勤日数が減ったりしない限りは、このスパイラルから逃れられないのです。
しかし、これは15年前の初代リーフがデビューした当時の基礎充電環境で電気自動車を運用した前提です。
将来、自宅で使える電圧や電流量が当時よりももっともっと大きくなれば解決出来ます。実際に3kwhを超える6kwhタイプの普通充電器も普及し始めています。ドンドン良くなっていますね。電気自動車の電費が良くなっても同じ様に遠くまで行ける様になります。
仮にアリアの実電費を0.5km/kwhでも良くすることが出来れば、30kwhの夜間充電可能電力から165kmを走行することが可能になります。
これだけでも、次の週末まで基礎充電だけで乗り切れますね。
電気自動車は本格的に量産されてからまだたったの15年です。今日よりも明日、明日よりも明後日とドンドン使いやすくなっていくと思います。
この普通充電の壁は、給油が5分ほどで完了するガソリン車しか乗られたことがない方だと実感しづらいと思います。電気自動車オーナーにとっては当たり前の事なんですけどね。
でも、逆に考えると毎日100kmも通勤する方は日産の誇るe-POWERシリーズを選んでいただければ問題解決です。完全モーター駆動ですからBEV車と同じく走りはとても快適です。
これから技術の進歩でもっと電気自動車の電費が良くなったり、自宅だけでは無く会社にも普通充電器が設置されたりすれば今の電気自動車が抱える普通充電の壁はドンドン低くなると思います。
普通充電が会社で仕事をしている間も可能になりますからね。普通充電器の設置は大掛かりな工事や専用の変電設備なども不要なので、現実味があります。
こんなことを書きながらも、船長の愛車であるサクラは、市内を移動するシティコミューターとしては、発売されている自動車の中で最高の乗り物だと自負しております。船長は職場での基礎充電が多いですが、出勤してから充電器に繋いでおくだけなのでとても簡単です。
今回お披露目された新型リーフなんてもっと便利だろうと期待しているところです。
今回のテーマは、日本では日産車に限らず、どんなメーカーの電気自動車も持っている悩みだと思います。各メーカーで協力してこの壁を乗り越えられると良いなと船長は思います。
では、また次回お会いしましょう。