電気自動車には、走行用の電力以外に必要な電力が沢山有ります。今回は夏になって来ましたので、この走る以外の電力について書いていこうと思います。
話が分かりやすくなるように電気自動車と内燃機関車を比べてみます。なるべくシンプルな構造の方が理解し易いと思いますので、今回は一番質素な原付バイクと平均的なガソリン車、更に電気自動車を比べてみます。
原付バイクが走るに必要なのは、ガソリンと空気です。キックスターター付きのモデルであれば、他は何も要らないかも知れません。
エンジンを始動しないと始まりませんので、まずは人力でキックします。
無事にプラグに点火してクランクシャフトを回してエンジンを掛けることが出来ればもう安心です。エンジンに点火をするための電気もエンジン自身が回転させる発電機(オルタネーターとかダイナモとか呼ばれます)から供給出来ます。後はガソリンタンクが空になるまでずっと走ることが可能です。
走行中にはヘッドライトやウインカー、ブレーキランプとテールランプなどが電気を使います。スピードメーターも夜見える様に電気で光りますね。
これらの電力はエンジンが回転する際に繋がった発電機が回転することで賄われます。更に余った分を鉛バッテリーに蓄えて次回の始動時まで残しておくイメージですね。
このように原付バイクはあまり電気を必要としません。始動が出来れば充分ですからね。
車になったらどうでしょう?
最近の車ですので、ドアロックもリモコン式の電動です。鉛バッテリーに蓄えた12Vからドアロックを電動アクチュエーターで解除します。
乗り込んだらエンジンを掛けたいところですが、流石に車はキックスタートという訳にはいきません。大昔はエンジンにクランク棒を差し込んで始動させるものもあった様ですが、船長は見たことが有りません。
そこでスターターモーターを使います。
カギを回すとキュルキュルと回るあの子です。動力源は勿論12Vバッテリーです。エンジンが掛かるためにはガソリンが必要ですが、今時の車は電動燃料ポンプで燃料タンクから送り込みます。勿論12Vバッテリーで動かします。
ブルッンとエンジンが掛かれば、一安心です。これでパワーウィンドウを開け閉めしたり、エアコンを使うことも、シートヒーターを使うことも問題なく行うことが出来ます。
エンジンが始動するのに合わせてナビゲーションやドライブレコーダーが起動しましたね。勿論、全て12Vバッテリーで動いています。
では、オートマチックをDレンジに入れて出発です。誰が実際に回転しているエンジンにギアを繋いでくれるのかって?勿論、電気でトランスミッションの中にある電動アクチュエーターを動かします。
走り始めますとトンネルで勝手にヘッドライトが点灯したり、バックしたらバックカメラが映ったりと快適です。動力源は勿論電気ですね。
エアコンも室外機にあたる部分はエンジンにベルトで回して貰っていますので、エンジンが掛かっていればガンガン使えます。室内に風邪を送るブロアファンモーターは12Vバッテリーから動かします。
エンジンが回っていないと車は走れませんので、基本エンジンは常に回っています。その間も発電機はベルトでエンジンに繋がって供回りしていますので、電気はドンドン発電機から供給されて来ます。
最近の車は発電機も大きなモノを搭載していますので、沢山使っても大丈夫な事が多いです。それでも車が設計時に想定している以上の電気を使ってしまっている場合は、徐々に12Vバッテリーが空になってしまう可能性はありますね。
こうして車の各部で使われた以外の余り分は、12V鉛バッテリーに蓄えられます。次にエンジンを掛けるときまで取っておく訳ですね。
では、更に電気自動車になったらどうでしょうか?
ドアロックやヘッドライト、スピードメーターなどはガソリン車と同じ考え方で大丈夫です。電気で動かします。電気自動車にも12Vバッテリーが搭載されています。
始動後の電気の供給はガソリン車と違います。電気自動車には発電機が積まれていませんので、床下のリチウムイオンバッテリーから供給します。
ここで問題があります。車の電装品は12Vですが、電気自動車に搭載されているリチウムイオンバッテリーは350Vなんです。これではそのまま繋ぐことが出来ません。
このような時は電圧変更して使います。DC-DCコンバーターの出番です。Direct Current to Direcr Currentですね。直流から直流へコンバートする為にデコデコと呼ばれる装置を使います。
電圧変更が出来れば、後はガソリン車と同じ構造で動かせます。快適ですね。
冷暖房を除けばですけれど…。
電気自動車の電費を悪くする最大の原因は空調なんです。ガソリン車ではエンジンが直接回してくれていた部分です。そう、エアコンの室外機、コンプレッサーです。

この夏初めて冷房を使う前の船長のサクラです。平均時速21kmで電費が驚異の12km/kwhですね。
エンジン車は走っている限りはエンジンが回っている訳ですから、動力をエンジンの回転軸から取れば困りませんでした。でも、電気自動車にはそんな都合の良いモノが有りません。走行用モーターでコンプレッサーを回すことは不可能では無いかも知れませんが、聞いた事がありません。
ではどうしているのか…?答えは簡単です。自分の電池でコンプレッサーを回すモーターを使えば良いのです。電動エアコンですね。家の室外機と同じ仕組みです。
これでエンジンが無くてもエアコンが使えます。しかもかなり高性能です。でも電気をかなり使います。
冷房は分かったけど、暖房は排熱利用なんだから違うよねと思った方、鋭いですね、でも、そう上手くはいかないのです。
そもそも暖房は冷房よりもっと大変です。何しろエンジンという力強いストーブが無いんですから。リチウムイオン電池も熱を出しますがとても暖房に流用出来るほど安定した熱は取れません。
今の電気自動車の暖房は電気ストーブに近いイメージです。勿論、自分の電池から必要な電気を送ります。
何だか電池の無駄遣いに聞こえますよね。そうなんです。走るだけなら想像よりも電気を使わないのが電気自動車なんです。

暑くなってから300キロほど乗ったところです。平均電費が落ち始めました。
何しろ現代の車は進歩が凄いので色々な制御が電気仕掛けになっています。そのおかげで電動スライドドアやナビゲーション、自動ブレーキに自動運転などなど便利になっています。エアコンが付いていない車なんてどこのメーカーも売っていません。
そのままガソリン車と同じ装備で電気自動車を作れば、電気を沢山使ってしまうのも無理はありません。
電気自動車の直流350Vバッテリーから直に繋いで動かせるならまだ良いかも知れませんが、直流の中でも電圧の変換、更には駆動用モーターを交流で回すために直流と交流の変換などが必要です。その都度変換ロスが発生している筈なんです。
船長は考えました。電気自動車専用に12Vではない、新しい車載電装品を設計して使えば解決するのではと。ですが、100年近い歴史と信頼性のある部品を捨てて、パワーウィンドウやナビゲーション、ドアロック、コンピュータなどを新規開発するのは現実的ではない気がします。しかも、350Vのままスピードメーターを動かすなんて考えられません。やはり変換が必要です。
船長がサクラのオーナーだから言う訳ではありませんが、電気自動車は走行する以外の電気がすごく必要です。時には走行用の電力を上回る位に必要な場面があります。
船長も最近は暑くなってきたのでエアコンを入れて通勤しています。30分間の通勤なんですが電費が40%位悪化します。片道約10kmですの大雑把に捉えると走行距離にして4km分がエアコンに使われてる感じです。10km走るために14km分の電気を使わないといけません。走る分の半分近くが冷房の電力にを使われている計算です。
確かに家庭用のエアコンの40型だと冷房定格出力4kwですから、船長のエアコンオフで電費12km/kwhのサクラを50kmも走らせる出力になっても不思議はありません。渋滞でエアコンを動かしている時間が長くなればもっと消費電力は大きくなってしまいます。真夏の冷房に立ち上げ時もすごい消費電力だと思います。
文系の船長ではこの位の説明しか出来ませんが、現代の車はガソリン車を含めて沢山の電気を(正確にはエネルギー)使って動いています。
ガソリン車ではクランクシャフトの回転力やラジエターの排熱、それがない電気自動車では自分のリチウムイオンバッテリーから使います。
でも、船長はこれを見て電気自動車って使えないとは思いませんでした。逆に30分間冷房を使う電気だけで4kmも車が走れるサクラって凄いなって感動しています。
そしてガソリン車って実は凄くエネルギー効率が悪いのでは?と考えてしまった所です。
ガソリン車に乗っている間は、こんな事を考えもしませんでした。エンジンが回らないと走れないガソリン車では、その回転を借用しているだけなので運転手は気が付かないのです。発電機を切り離して走るテストも出来ませんから、オンとオフの違いを測ることが出来ませんからね。
簡単にと言いながら、とても長くなってしまいました。詳しい方からだと突っ込みどころ満載の説明だと思いますが、船長は大航海時代の人なので優しくしてください。
車業界に27年もいる船長でも、自分の車として体感するまでは中々理解出来ませんでした。
ぜひ一度、丸々一日や一泊二日のモニターをしてみてください。色々分かると思います。
ファーレ金沢店にはサクラを複数台数用意しています。
気になる方は、お気軽にお問い合わせください。
では、また次回にお会いしましょう。



