
そこはまるで写実主義の絵画展のようだった。
くり抜かれた3面のテントの入り口たちは
各々鮮やかな黄金色の絨毯や、秋の角度の付いた
木漏れ日が織りなす絵画たちの額縁となっていた。
誰かがふと、
ミレーの落穂拾いのような色の世界だなぁ。
と言った。。
ロマン派後期、
ミレーは現実世界を画布に息を吹き込んだ。
落穂拾いしている人々は
みな下級階層の人々だ。
光と闇。
同時期、音楽界も
ドビュッシーやサティーなど
より現実的な音(noise)を求めて行った。。
つい
ウトウト
気づかぬうちに
眠り込んでいたようだ。
ふと気づくと
Marshallのポータブルスピーカーからは
五島みどりのサラサーテの
サパテアードが
流れていた。
Marshallは超絶技巧にして流麗、
彼女の小柄ながらもエネルギッシュさと、
伴奏者との息のあったラストも
よく体現できていると思った。

憧憬。
景色と芸術。
現実と非現実とが混ざり合う。
そして音楽、と酒。
これぞキャンプの醍醐味だ。
そういえば、、
"サラサーテの盤"
内田百間の短編集、久しぶりに読みたくなった。
サラサーテ自ら演奏したツィゴイネルワイゼンの
レコードに本人の声が入っていたことが
ヒントに小説化されたようだが、
ならば“グレングールドの盤“
もあって然るべきかと。
酒に酔って雄弁に。
侃侃諤諤。。
清風明月
…そして…
光はやがて、“秋の夜長”という名の闇に
まもなく跡形もなく飲み込まれてゆくのだ。
そして、もうすぐそこまで忍び寄っている。



