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23/04/16 14:35

#それが見える貴方なら・・・

こんにちは。
三ツ境店のSORAです。
今回は、通勤の間にでも読んでいただけるかなと、
「読み物」など書いてみようかと思います。

#それが見える貴方なら・・・



 私がこの場所からこの橋を眺めるのはいつ以来のことだろうか?
 車を道の左端に寄せて降りたところからの景色。
 近いような遠いような、私には掴みづらい距離感なのだが、どういうわけかこの場所が一番好きなのだ。
 夜にでもなれば辺りは真っ暗闇に染まり、街灯もなければ、人の影さえ見つけられない。
 実はそれがもう一つ、ここへ来る理由なのかもしれない。
 みんな平等な暗闇の中では、私が背負わされたことなんて対して価値なんか無いように思えるからだ。
 私はそんなことを考えながら、缶コーヒーのタブを開けた。



 手元の缶から燻る湯気の白さは、私が見る景色の色彩と大差ないのだろうから。
 夜の色はそれはそれで何色かに表現のしようはあるのだろうが、私には同じことだ。それが何色でも、綺麗でも綺麗でなくても、今更見たいなんて気持ちを掻き立てられることはない。
――――――はずだったんだ・・・



 なんだ?なんなんだ?
 私は目がおかしくなったのかと錯覚に陥った。
 色が・・・ある?
 ぼやけた輪郭の向こう側から、私の目に色彩と呼べるであろう刺激が飛び込んできた。
「あら、珍しいこともあるものね。こんな明るい時間からこちら側に来るなんて。貴方は誰かしら?」
 どこからだ?なんだこの女の声は?
「まあいいわ。貴方が誰でも構わない。少しお話させて頂けて?」
 随分と上からな物言いだな。



 舞台なんかなら暗転を挟むところだろうに。また目の前の景色が色彩を変えた。
「遠い昔のお話よ。貴方みたいな人がこちら側に来たことがあった。私もまだ若かったわね。もっとも、今も私の時間は止まっているけれど」
 なんの話だ?この女は頭がイカれているのか?
「信じてないわね。私の声が聞こえていて、目の前の景色も変わって見えているくせに」
「誰なんだ?なんの話をしている?そっち側ってのはなんのことだ?」
「質問に答えるのは貴方のほう。貴方に私の心残りをあげたいのだけれど、もらってくれるかしら?」



「暗転を挟んだつもりか?」
「質問に答えて。貴方に損はないはずよ。もちろん、私にも」
 私は返答の代わりに沈黙した。
「黙っていては分からないわ。それとも、答えはイエスでいいのかしら?」
「損があるとかないとか、それより、受け取れば私は元の場所に戻れるんだな?」
「交渉成立ね。私の長い心残りも今日でおしまい。貴方にも絶対に損はないから」
「もういい、私は帰りたい」
 私の視界は本当の暗転に落ち、視線は暗闇を泳ぎだした。



 次の瞬間、私の視界は、信じられない色彩を捉えていた。
 世の中は、この場所は、こんなにも鮮やかだったのか。
 さっきのはなんだったんだ?なぜ私の目は世界の色を見ることができている?私に損はない。それはこのことか。
 いったいなんだったんだ。
 私が振り返ると、ブロッサムピンクのサクラが私を待っていた。
 私の車はこんなに綺麗な色だったんだ。


さてさて、不思議な不思議な「読み物がたり」でした。
通勤の電車の中ででも読んでみてくださいませ。
こんなのを書くのが好きなSORAなのでした。
 
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