相模原南橋本店のSORAです!
今回はショートストーリー第6弾!
ルークスを題材にしました!
#その時はまた、あなたのために

私が車を止めたのは、今日の仕事で失敗をしてしまったから。
いや、それだけなら家に帰って少し強いお酒でも飲めばいい。多分、失敗のこと以外にも何か理由があったのかもしれない。
それが何なのかはよく分からないのだけれど。
車の中でしばらく音楽でも聴いてから帰ろう。
私はお気に入りの曲をカーオーディオで流そうと、ナビのミュージックフォルダを開こうとした。

すると、どういうわけか、ナビの画面が反応しない。
故障かしら?ついてないわね。私は少し疲れが増したような気がして溜息をついた。
まさか曲のデータも消えたりしてないといいけれど。私の疲れは次第にやるせなさに変わっていった。

どうしたものかしら?すぐに車をスタートさせる気にもならず、私は携帯でも見ようかと、助手席に置いた鞄から携帯を出す。
ところが、これもどうしたものか、電源が切れていて、もう一度入れようにも電源が入らない。
もう!こっちも故障なの?どうなってるのよ?
私は、一瞬このまま車のエンジンも止まってしまうのかしら?なんて嫌な予感がしてしまった。

「悪いな。ちょっと話したくてね」
えっ、何?今の声は何?
ありえないわ。だって、そんなはずは・・・
父の声がするなんて・・・
「最後に話したかったんだが、なんとも酷い顔をしているな。せめて喜ばないまでも、泣かないでほしいものだがな」
「えっ・・・」
私は泣いていたようだ。そんなこと気付くのなんてもっと後でいいのに。
どうして、二週間前に見送った父の声が・・・

「俺が涙を拭いてやりたいところだが、無理でね。すまんな」
父の声に私は声が出せなかった。それなのに涙だけは、止まらない。
「ごめん。外の空気、吸ってみるわ」

私は涙を拭いて、もう一度車内に戻った。
涙が持つ体温の熱さに、秋の夜に漂う空気は余計に冷たく感じる。
「涙って熱いのね。空気は冷たいし。こんな秋はあまり好きじゃないわ」
「そうか?俺は割と好きだがな。月が綺麗だ」
「私の機嫌を取ろうとしてるの?」
「何を言っている?俺は文豪の小説なんか読まないぞ」
「うふふ、意味分かってるじゃない」
私は、何気ない父の一言に、少し心が軽くなった気がした。

「少しはいい顔になったな。俺が見たかった顔だ」
「それなら良かったわ」
「最後にその顔を見ておきたくてな。それと、今までありがとう。それを言いたかったんだ」
それを聞いて、私の頬にまた涙が伝った。
「泣くなって。お前にはこれからがあるだろう。陰ながら応援してるから」

「でも、やっぱり・・・、寂しさはあるわ」
「秋の夜風を冷たく感じて、流した涙が熱いと思う間はまだまだ大丈夫だ。まあ、楽しんで生きて、何十年後かにまた会おう」
「そんな・・・」
父の声はそれで終わりだった。
それと同時に、車のナビ画面や携帯は正常に戻り、何事もなかったように私は車の中にいた。

せっかくだもの。何十年後かにまた。ね?
「ありがとうを言いたかったのはこっちよ」
私は寂しさが少し紛れるまで、音楽を聴いてから車をスタートさせた。
さてさて、第6弾!
思い出と未来とルークス。
という感じにしてみました。
いかがでしたでしょう?
ルークスみなはし号に乗ったり見たりして、ルークスと仲良くなってくださいまし!
みなはし一同、お待ちしております!