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2026/08/30 07:20

I LOVE NISSAN 江東 No117

こんにちは 江東店 店長の松原です

突然ですが、私には昔から特殊な能力があります。

■自動車部品と話ができるんです

「店長また始まった?」
そう思った方。

まあ、そう言わずにお付き合いください。

■平成初期の頃のお話です

私の目の前にいるのは、2本のカムシャフト。

CA18DET用。
1本はIN(インテーク)。
もう1本はEX(エキゾースト)。

私は二人に聞きました。

「君たち、どこから来たの?」

すると、右側のカムシャフトが答えました。

「E-HNU12から」

もう1本が続けます。

「ブルーバードよ」

「グレードは?」

二人は、ほぼ同時に答えました。

「SSS-R」

私は、思わず背筋を伸ばしました。

■U12ブルーバードSSS-R

SSS-Rは、普通のブルーバードではありません。

ラリー競技を意識して作られた、
特別なブルーバードです。

そして、そのエンジンに使われていたのが、この二人。
INカムさんとEXカムさんです。

私はもう一度聞きました。

「二人ともSSS-Rなの?」

INカムさんが答えます。

「そうよ」

EXカムさんが続けます。

「私たち、二人で一組なの」

「なるほど」

私が頷くと、EXカムさんが言いました。

「何よ。一人じゃ何もできないと思ってる?」

INカムさんがすかさず、

「あなたは少し黙ってて」

どうやら二人は、仲が良いような、悪いような。


私は聞きました。

「SSS-Rって、やっぱり速いの?」

INカムさんが胸を張ります。

「速いわよ!」

EXカムさんが続けます。

「でも、速いだけじゃない」

「じゃあ、何が得意なの?」

二人が顔を見合わせました。

そしてEXカムさんが言いました。

「登り」

「登り?」

「そう、登り」

INカムさんが続けます。

「ラリーでは、平坦な道だけを走るわけじゃないもの」
「登り坂もある」
「低速コーナーもある」
「そこからの加速も必要」

なんだか妙に説得力があります。

■そして、S13へ

そんな二人が、ある日、
S13シルビアのCA18DETに入ることになりました。

「S13に行くの?」

INカムさんが答えます。

「そうよ」

EXカムさんは、
「楽しそうじゃない?」

「でも、S13はラリーカーじゃないよ」

するとEXカムさんが笑いました。

「クルマが違っても、エンジンはCA18DETでしょ」

INカムさんも、
「問題ないわ」

「本当に?」

EXさんが答えます。

「走れば分かるわ」

なんだか二人とも、自信満々です。

そして二人は、
S13のCA18DETに組み込まれました。

エンジンに火が入る。
アイドリング。
アクセルを軽く煽る。

そして、クルマを走らせます。

最初は、
「少し違うかな?」

その程度でした。

ところが、
坂道に入った瞬間です。

アクセルを踏み込む。

グッ。

S13が前に出ます。

さらに踏む。

グイッ。

また踏む。

ググッ。

坂道を、どんどん登っていきます。

私は思わず、

「何これ……」

するとINカムさんが、
「だから言ったでしょ」

EXカムさんが続けます。

「登りは得意なの」

私が一番印象に残ったのは、
すさまじい登坂力。

坂道になると、
S13がまるで別のクルマのように感じる。

アクセルを踏み込むと、
「まだ行ける!」

そんな感じで、グイグイ登っていく。

私は二人に聞きました。

「君たち、いったい何をしたの?」

INカムさんが答えます。

「私たちは、何もしてないわ」

EXカムさんが続けます。

「本来の仕事をしただけよ」

なるほど。
そういうことなのかもしれません。

この二人は、
ラリー競技を意識して作られたSSS-Rというクルマの中で、
登り坂や低速からの加速など、
さまざまな場面で力を発揮するために働いていた。

そんな二人を、
今度はS13シルビアに連れてきた。

だから、
SSS-Rの性格が、S13の中に少し入り込んだ。

私は、そんなふうに感じました。

■二人に聞いてみた

最後に、二人に聞いてみました。

「ねえ」

「何?」

「S13はどうだった?」

INカムさんが、
「悪くないわ」

EXカムさんは、
「もっと走りたかった」

「また乗りたい?」

二人は、しばらく黙っていました。

そしてINカムさんが言いました。

「私たちは、どこに行っても仕事をするだけよ」

EXカムさんが続けます。

「でも……」

「でも?」

少し間を置いてEXカムさんが言いました。

「坂道は、やっぱり好き…」


今では、
S13シルビアも、
U12ブルーバードSSS-Rも、
街で見かけることはほとんどなくなりました。

でも、あの時のS13が坂道を駆け上がっていった感覚は、
今でも覚えています。

INカムさんとEXカムさん。

二本のカムシャフトが、
「私たちはSSS-Rよ!」
と、胸を張っているようでした。

自動車部品には、
それぞれ生まれた理由があります。

そして、
その部品が持っている性格もある。

だから私は今でも、
古い自動車部品を見ると、
つい話しかけてしまいます。

「君たち、何処から来たの?」

すると、どこからか、

「SSS-R✨」

と、二人の声が聞こえてくる気がします。


最後までお読み頂きありがとうございました。
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